基地の食堂

社員に成りすましてさくらインターネットに潜入していたがここはネット企業の社屋というよりもテレビ局か軍の基地のようだった。とにかく建物がでかく、迷いながら廊下を歩いていたら知らない人にだらしない格好を怒られた。人目を避けてトイレに行くと板張…

死ぬ順番・慰め

あらすじ:その建物に集まった人間が一人ずつ死んでゆくという一連の事件が進行中で、前回のセッションを賢く生き残った者は、予め届けられた複数の赤い桝に何らかの意味を見いだしていたらしい。(桝をひとつも貰えなかったいとう/のいぢは真っ先に死んだ。…

ガラスのレール

できるだけ急いで東京に行かねばならず、高速鉄道だか特急新幹線だか、とにかく何かの新規な交通を使うことになった。駅からは幅1メートル、高さは腰ほどのガラス板が何枚も連なって、これが軌条になっている。なにも分からないままに前の客に倣い、プラッ…

椅子を並べて試験勉強をしていて、右隣の男が何か質問することに、左隣の女の子が笑っていた。彼女から借りた教科書を読んで、「ア・プリオリ」とは、「ア」つまり自分自身、「プリオリ」つまり世界と規範、だということを知った。

廃ビルと海

物を借りるのだったか返すのだったか、とにかくそういう理由で、知り合いの家に行かなくてはならぬということになって、東の方にあるぼろいビルを訪ねた。彼の住んでいるあたりは見捨てられ荒れはてた地区で、オレンジの街灯に照らされた広い夜道には人気も…

丘と内海

四人ほど連れ立って小舟に乗り内海に入り、そこから陸につけて小高い丘に登る。眼下に海と島々が映る美しい眺めだけど実はここでは戦いが繰り広げられている、俺たちには見えていないだけで本当はひゅんひゅんと矢が飛び交っているのだ。戦いに加われば俺た…

宇宙のネット

通っていた高校のあった田舎町の、川沿いの工場でバイトをしていた。工場の中はだだっ広く白っぽい内装で、そこで何を作っているのかというと、宇宙に飛ばすロケットの積み荷だった。既に辞めてしまったひとつ上の先輩たちが時々その積み荷を盗み出すのを手…

甲板

親戚の結婚式で、小さな卓を囲んで何やら食事をしている。その店ですべての儀式が行われるみたいだったけどコンビニほどの広さもなくてとても狭くるしかった。その席に親戚でないもの(これはΝといった)が一人いて、どういうことかと尋ねると、近くを通りがか…

防波堤の夜

遠い過去の俺たちはその晩ロケットの打ち上げに成功し、俺は高い高い防波堤に立って、月の夜空を見上げて喜ぶ俺たちの昔の姿を見下ろしていた。ロケットが大気圏を抜けようとするとき失速しているように見えたので投げなおしてやると、ロケットは月に向かっ…

装甲車の屋根

土色の世界でおれは兵役についていて、装甲車みたいなごつい車に乗って悪路を行くと、高校の頃の友人Hに出会った。頭髪をきれいに剃った彼の後頭部から額にかけて、皮膚の下を血管が何本か平行に、赤く太く流れているのが見えて、その模様が何かの呪術みた…

シャワールームの排水溝

黒いPCが乱雑に置かれた学校の情報端末室で、近くの席にいた人間のマシンからの音声配信のテストをしていたところT君が現れ、彼はこのたびの歓迎会だかには出席できない由を聞く。部屋にいた人間たちが椅子やモニタをガラガラと近づけあって何やら相談をはじ…

橙の街

ごちゃごちゃした街の、風俗店に行こうと思ってエレベーターに乗ったが間違ってひとつ上の階で降りてしまい、階段を使うしかないのだけど、その道がわからなくて見渡すと建物の中は黒々としているいっぽう外の景色は、中庭は緑に、街は橙に輝いている。四角…

倒木のトイレ

病院の食堂でチキンカツを注文し、席につく前にトイレに入ろうと思ったものの、(トイレは部屋の四隅のうち三つにバラバラに設置されている)どれも取って付けたようなお粗末さだったので嫌になってやめた。後の二人(俺たちは三人で来た)はひとつのトイレ…

TTY

TTY=(ついに津波の夢をみた)。 おれの町の名物は二重に用意された五階建てほどの高さの堤防で、そのエキゾチックさは旅する物語の主人公が訪れる奇妙な町々のそれを想像してもらえばよい。二つの堤防の間にあったおれの家は外側の堤防もろとも既に破壊され…

埃の息

風呂から上がって部屋を覗くと、壁の陰からほうっ、と煙が吹き出し、それが人の吐息のようだったので、煙草かと思い駆け寄ったが、本当にただの吐息だった。吐息の主は作業服を着た見知らぬ爺で、自分が埃のような息を吐いていたのを見られて狼狽しながら、…

現実への看板

学校の、視聴覚室のある薄暗い棟で、試験の時間を待っていて、暇を持てあまして日なたの屋上で時間をつぶしていたとき、ふと、試験は十二時だと思っていたけれど、実は九時からなのではないかという思いに駆られて、記憶を手繰ってみると、じつはハッキリと…

タイルにうんこ

ドラマにでもでてきそうな広いマンションの部屋の壁の一面は大きなガラスになっていて、明かりのない部屋を町が薄暗く照らしている。壁に近づけば夜景が見下ろせるだろう。ラジオでは北野武の番組が流れていて、通りがかった、おれの知っている女がゲストと…

インドの体術

インド人に教鞭をとったという男が勤務先に新しくやってきたので、体術で勝負した。相手がなかなかの強者で、気づいたら重心のこちら側に足を踏み込まれて投げられそうになる。上から中断の声がかからなければ危ういところだった。戦いの様子を後ろから覗き…

黄金のスライム

クリスマス・イブに見た夢ということになる。ずっと寝てたからなんかいろんな夢をみた。 学校で、次の授業のために廊下を歩いていると、廊下にあるベンチとか、中庭の芝生とかで、水泳の授業後らしい男女の生徒たちがスクール水着で体を重ねている。男子に覆…

急流下り

帰省のタイミングを決めかねていたところだったので、友人が帰省すると言ったときにこれ幸いと即座にしたがった。学校から駅までの道は川下りである。それぞれマットにうつ伏せに掴まって、あの難攻不落の急流を攻める。……いくつかのジャンプとカーブをクリ…

夜のエレベーター

定員六人くらいのエレベーターに詰めて乗ったら、しばらくしてから目の前にいるのが友人だと気づき声をかけると、周りにいるのもみんな同じころの友人だった。まさか人に会うとは思っていなかったので自分の無精髭を気にしていたら「お前のは無精髭ってレベ…

桶と臓物

音節の新しい区切り方を発見したので、もう帰らない(帰れない)と思っていた家に戻ってきた。それから夜明けとともに、ペットを連れてまた家を抜け出した。こっそり出たつもりだったけど、妹が出てきてついて来たので、さしあたり家出は中断することにした…

少女と父親の夢の世界

最上階で決着がつくことになっていたので、巨大な駅の終点のようなところを経由し、壁づたいに上がっていくことにした。壁は道筋の書かれた正方形のタイルを並べたようになっていて、その道筋を辿ることでしか進めないのだけど、どこかで誰かが設計(タイルの…

コップの水

周囲に見守られて、決勝戦は何とかという、相手の女の子が告げた競技で行われることになった。その競技とは互いに水の入ったコップを持ち、舞いながら相手のコップに注ぎあうというものだということだ。試合は相手が左手にコップひとつ、こちらが両手にひと…

金色の少女の顔

実家の寺の跡を継ぐので四千万円を手に入れるという夢を見ながら、その夢の中で、この夢を見るのはもう七八回目にもなる俺は何度親を殺しているんだと思った。もちろん起きてから考えれば以前に見たことなどないはずだ。さて使いの少女が目録を手渡すとき、…

コンクリート、深海魚

見渡す限りコンクリートが続く空港は寒々しく、実際、雪が降りそうな天気だ。そこにきて俺たちはやっと、最後の障害を排除した。目的は達成したのだからあとは帰還するだけだったが、それでも人目を避けるため、5メートルほどもある巨大な、体の器官のまった…

内側の目の涙

夢の中で漫画を読んでいた。 部屋の惨状が描かれていた。あお向けに並んだ三つ子の死体はみな顔のどこかがえぐれていて、(目の残っているものは)虚ろな瞳で天井を見つめていた。視線をそらすとその母親が死んでいた。彼女はおそらく一目では彼女だとわからな…

たてがみはしんかく

「『たてがみはしんかく』。あ、これは画像検索しちゃダメだからね」 『鬣は神格』か?気づいたときにはもうぐぐってしまっているぞ。(そのうえ運悪く画像検索だった)

パイプを渡る

ある女の子が、となり町のたぶん恋人の少年に会いにいくというので、ちょっかいを出しに、同行することにした。行きずりに胡散臭い中年男性も連れて、海の上にかかる細く長いパイプを渡る。この脆弱な道を歩いてしか、向こう側にたどり着くことはできないの…

音楽室のピエロ

目の前に着飾った金髪の男がいた。中世西洋の、貴族のようないでたち。おれは音楽講義室の固定された椅子に座っていた。暗い室内だけど、整然と並んだ机に他にもたくさん人がいるのが分かる。どうやら目の前のこの男がホストで、何かを祝っているらしかった…