彼女ができて二週間

いや、それよりもずっと前から、妙な視線を感じてる。知らず知らずのうちに家まで辿りついていたり、気付いたら夕方になっていたり、そういう風に『時間や空間を無意識にすっ飛ばしている』経験は誰にでもあることだろう。そういう時に、真っ暗な不可知の世界をひとりの男の顔が覆い尽している。なんとなく俺に似ている気がするその男と、視線が合った気がする。と思ったら現実に引き戻され、俺は授業を受けていたり小早川と話をしていたり。あれは何だったのか…と思いながらいつもの生活を送っている。それでも最近とくに感じるのは、そのような光にあふれた現実の世界の裏側にすら、その男の顔がうっすらと透けて見える気がするのだ。いつだったか小早川とキスをした時、その男とも同時にキスをしていたようにも思う。世界にあまねく在り、時間も場所も俺の人生すらも思いのままに、世界を覆う大きな顔、世界を見守る大きな存在。それを俺は『神』と呼ぶことにした。