ポリゴンの島

小さい島に人がぱらぱらといるのが分かる。島にいる全ての人の位置が一目で分かるくらいのスケールの島。俺はこの島の外に現実の世界、夢から醒めた世界があることを知っているので、筏でもって外に出ようという話をするが相手にされない。よしんば外の世界があるとしても、そこへ行って帰ってくるには何もかもがこの島に足りていないと島の人々には言われるので、俺は片道の行程でも行けるならそれでいいと主張していた。
島は大きく二つの部分に分けられていて、広い方は舗装されていない芝生だったが、もう一方は石畳で温室ふうの屋根があり、噴水に通じる細い道に俺はいた。そこで金属バットを持ってアイドルを殴っていた。彼女は殴られるたびに小さくなっていき、情報が欠損してポリゴンのようになって、ついには赤黒い直方体になっていた。もうテクスチャの1ピクセルもこぶし大になったというころに、バットでもう一撃を加えると、そのオブジェクトのキャプションが『伊澄佳奈子』*1から『伊澄佳奈子だった』に変わり、怖くなったので殴るのをやめた。

*1:こんな雰囲気の名前だった