今日の喫茶店

また、母親が娘に勉強を仕込んでいる現場を目の当たりにした。喫茶店でどこぞのドリルを解かせて、答えを誤ったというので紙を取り上げ、指差し、机を叩いて怒っている。「お正月に羽根を『あげる』?そんなのおかしいでしょ!」俺は大人だから正答が「羽根を『つく』」だと分かるが、かわいそうに女の子は母親の目を見つめて「はい」「はい」と繰り返すことしかできない。母親が子供の腰と胸を押さえて背すじを無理矢理伸ばしながら何ごとか吹き込んでいるのは、動物にしつけをする時には正しいやり方だ。母親にも固守しなければならないことがあるんだろう、娘の脳に期待するところがあるんだろう、こんな教育ではマトモに子供が成長するとは思えないが、げに恐ろしきは女性のヒステリーだ。こんな調子じゃきっとこの子はぐれるだろう。むしろそうなって欲しいと思う。10年後にそういう女の子を見かけたら、この子を思い出せるようにしよう…と思った。
そのあと隣の席に座ったおっさんが女子大学生に一方的に語りかけているのを目にすることができた。最初は携帯の使い方の話だったか、まだ元気あり余っていますという風のその人は昔に起業したということで、いまは自由にやっています、決心のタイミングが早くても遅くても駄目だったと思うんだよねというようなことを聞かれもしないのに話し始めて、相手の学生も喜んで聞いている訳ではないのだが妙に相槌を打つため話が長々と続いているのだった。話が途切れて学生が作業に戻ってもまた何のと話題を見つけては喋り始める。反対側には俺がいるんだが俺には喋ることないのかと思う。おじさんそろそろ帰るかという感じになったので会話が気になって読書に集中できなかった俺はホッとしたんだけど最後に誕生日など尋ねやがってそれに答える方もどうかと思うがその男、「じゃあ僕と一緒だね、金星の…」とまた話し始め、ラッキーカラーだとか適性のある職業を長々と語って帰っていった。