宇宙の帆船

港町が夜を迎え、湾岸の灯りを黒い海に映したパノラマが眼前に広がっている。俺はこれからこの街を発ち、宇宙に向かう。船長ひとり、客は俺ひとりの小さな帆船の甲板に立っていると、船が動き出す。45度は下らなそうな急傾斜のカタパルトを船は、勢いを増しながら滑り登ってゆく。このまま宇宙に飛び出るのかと思いきや、カタパルトを抜けた瞬間、船はそのまま真下に落ちていった。おいおいと思っていたら海面にぶつかる直前で強力な噴射をして、船は空を航行し始める。眼下を流れる波の勢いに気分を良くしていると、今度は突然船全体が海に潜りだし突然息が詰まったおれは急いで水面に戻ってぜーはーと息をして、そうか宇宙に行くのに最適な位置から飛び立つため、海を潜航して位置を大きく変える必要があるという話を聞いていた、と思い出し、それからひとつ深呼吸して、再び船に取り付くため間に合わば、と海に潜った。息を止めるのは90秒ほどの間で、その間に窒息し最悪の場合脳細胞に損傷が生じたとしても、これだけの安価で宇宙に行けるのだから、我慢できるでしょうと説明されていたのだった。息を我慢しながら、その通りだと思った。