パイプを渡る

ある女の子が、となり町のたぶん恋人の少年に会いにいくというので、ちょっかいを出しに、同行することにした。行きずりに胡散臭い中年男性も連れて、海の上にかかる細く長いパイプを渡る。この脆弱な道を歩いてしか、向こう側にたどり着くことはできないのだ。じきにどちらを向いても海原しか目に入らなくなるのだが、パイプは折れたり曲がったりしながらも体重をしっかりと支えていて、一行の歩みに恐れはない。やがて海を渡りきって土を踏むと、道づれの男がメントスの試作品をくれた。カメレオン味だというそれは、香料も何も混じっておらず、実にまずかった。