急流下り

帰省のタイミングを決めかねていたところだったので、友人が帰省すると言ったときにこれ幸いと即座にしたがった。学校から駅までの道は川下りである。それぞれマットにうつ伏せに掴まって、あの難攻不落の急流を攻める。……いくつかのジャンプとカーブをクリアして、駅へ。友人は民家の前に自転車を停める。帰省中はここの親父さんに預かってもらう契約らしい。おれはじろじろ見られた挙げ句、許された。しかしここで、衝動的に出発したせいで荷物をなにも持ってきていないことに気づき、友人の自転車を借りて学校まで戻ることにする。もう一つ、いつもポケットに入れているはずの財布がなくて、狼狽える。あの急流下りの最中に落としてしまったに違いない、どうしよう、どうしよう……。そこは友人の言葉にしたがって、警察に届けることにした。警察に頼ればひと安心だ。
目覚めてから、財布を落とすなんてのが夢でよかったと思った。夢って仮想化技術なのさ。