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焼肉

煤けた壁の焼肉ハウスで、律子は真美と再会した。手早く店員に注文を済ませ、ジョッキを持ち上げて「乾杯しよっ」と笑う真美を見て律子は思う、あの悪ガキが今やこんなに堂々と酒を飲めるっていうのだから、私ももういい歳だって訳だわ!

油を弾けさせながら焼ける肉を間に挟んで、思い出話に花が咲く。真美ひとりが事務所を去り大手に移籍したのは、双子が中学生になったときのことだったから、もう結構な年月が経っているのだ。あれからあずささんは早々と結婚してしまったとか、春香は地下アイドルとしてしぶとく活動を続けているとか、律子が話してやると、たぶん聞き及んではいるのだろうな、というようなことでも、真美はそのたびに喜んで話を聞いてくれる。懐かしむ気持ちは何にも勝る。移籍してからめきめきと頭角をあらわし、テレビへの露出が増えた真美の姿を律子も幾度となく目にしてきたけれど、こうやって直接会うとことの感慨はやはり、深い。

真美がデザートのシャーベットを食べ終えると、満腹感とともに二人は店を出た。タクシーに乗ってホテルへと帰る真美を見送りながら、亜美の名前が一度も話に上らなかった、それならまた会う機会もあるのだろうと律子は思った。