鯖まどか

翌朝の食卓に生魚が並んでいるのを目にして、パジャマ姿のまどかは顔をしかめた。青い皮がギラギラと光って目を射し、こんな気分の朝には吐き気を催す。椅子を引きながら、いかにも不機嫌そうに尋ねる。
「パパ、なにこれ」
「鯖だよ」
父親はキッチンで手を動かしながら答える。母親はというと、平然とコーヒーをすすりながら鯖をつついていて、無頓着だなとまどかは思う。
「うん……なんで朝から鯖なの」
イライラとテーブルに視線を落としながらそう呟くと、父親は手を止めてまどかに向き直った。
「それはこっちの台詞だよ。……昨日さやかちゃんが死んだよね?」
予期しない言葉にハッとして顔を上げると、父親が苦々しい顔でまどかを見つめていた。
「マミさんの時は目玉焼きなんて簡単に作れる料理があったからよかったんだけどね。最近の子は周りのことも考えずに青髪だなんて、いったい僕に朝から何を作れっていうんだ……鯖がなけりゃ朝からブルーハワイになるところだったんだぞ……」
最後は独り言のようになってぶつぶつと文句を言っているのを聞き流しながら、まどかは鯖をオレンジジュースで流しこんだ。
だけど魚の皮の青はいっこうにさやかを想起させず、ましてや涙が出ることなんてなくて、鯖じゃ雰囲気でないんだ、と考えながら登校する道中、ほむらちゃんが死んだら翌朝の朝食は何になるんだろう、朝食なら海苔かな、なんだか安いなって、そう思って笑っていた。