飛ばされる

数日のあいだ滞在していたホテルの部屋に二三人が荷物をまとめて現れ、どうやら俺たちは今朝ここを発つことになっているらしく、一緒にホテルを出る。外は強い台風で、何度も飛ばされそうになりながら川向こうまでたどり着いたが、俺がホテルのチェックアウトをしていないことに気づいた。同行者は時計を見て、まだ間に合うと言うので、俺ひとりホテルに戻ってチェックアウトの手続き(と自分の荷物の回収)をすることになった。外に出ると風は依然として強くて、一度は体ごと吹き飛ばされ、段差のある公園の三階にある手すりに掴まってなんとか、さらに吹き上げられる(そして落下する)ことを免れた。飛ばされている間に、二人の子供に覆い被さり風から守っている母親の姿が見えた。結局その売店で重しにするため1リットルのペットボトルを二つと傘を一本買い、体を沈めながら川向こうに再び戻ってきたが、肝心のホテルのことはすっかり忘れ去っていた。