絲山秋子『海の仙人』

海の仙人 (新潮文庫)

海の仙人 (新潮文庫)

前に『アーリオ オーリオ』を読んでそれはえらく好きだったが、静かな男女の仲を描くのがこの人の小説なんだろうか。や、そもそもこういうジャンルというか読者の集合があるってことなんだろうなと思うが。

薄い本だったが、静かな語りの中に事件はあって、別に解決されるわけでもなく状況は確定されてゆく。いい悪いではない。

映画的だな、と思うのは洋楽や車の名前がところどころ出現し、それならたぶんストーリーの中にそれなりの意味を持って配置されているのだろうと思うが、何一つ知らないので、ああではそのように書き手は感じているのだろうよと思うしかない。しかしファンタジーなんて名前の神的な人間が自然にその場にいるなんて光景を映像でやられたら笑うしかないだろうので、小説じゃないと厳しいという気持ちもあるよな。