なめらかな社会とその敵

なめらかな社会とその敵

★★★★。コンピュータとインターネットによっていかに社会を変革しうるか、いや、そのプロセスは描いていないのでどうありうるか、を野心的に考えた本。2013年。もっと古いと思ってた。

問題意識がいまいち了解できていない。 まあ最初に書いてあるとおり、「この複雑な世界を、複雑なまま生きる」ということなんだけど、そのラショネイルがよくわからんということなのだよね。個人や主体というものに責任が負わされる、ということをことさらに問題視しているように見えはするのだけど、そこが深堀りされることはないので、筆者の心の中には論があるのだろうと想像するほかない。気持ちの本だと思う。

複雑な世界を理解するために、生命は膜、核という寄稿を獲得した。個人とか国家とかいう今あるものも、その自然な延長だ。だがその離散的な理解をアップデートし、(個人よりさらに細かい単位の)分人からグローバルまで、連続的(なめらか)につながったものとして理解できないか、という試み。いわば PageRank 的な影響度の算出過程によって、既存の貨幣であったり民主主義であったりをなめらかにしようとする。そこに数理的なバックグラウンドを与えようとしているのはいいよね。これこそブロックチェーン的な技術を適用しようと考えるのに適した題材だと思うんだけど、うーん、PoC 的なのあったりするんだろうか?(自分でやる気はない)

ネットに感じてた希望のようなものをわずかに思い出せた気がしたのはよかったけれど、あとがき読んでたらなんだか辛くなってしまった。ハイソなひとびとが集う場というのがあるのだろう。そこにおれは招待されないのだろうと。