「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

★★★★。因果推論。因果って何なのか考えちゃうよね。原因によって結果がコントロールできるということだ。その逆ではないんだよ。(ここにいい例。いい例は本当に知りたい)。理想的には反事実なるものがあって、仮定している原因がなかったとき、がこれなのだけど、この反事実において結果がどうなるのかを知れば因果効果が分かる。もちろん現実には不可能な話なので、ある程度確からしい反事実の近似を用意し、比較する、というのが手法だ。むろん実験室なら問題とする条件以外が同じような設定を作りだせるけど、倫理的・政治的に困難だったり、そもそも時間の流れが一本しかないことで不可能だったりする。そこで他にもいくつか劣る方法があるという話。 曰く、 自然実験。比較可能な集団にたまたま分かれていたものをあとから分析するような方法。差の差分析。時間的な傾向、トレンドが結果に与える影響を取り除くため、差分どうしを比較する。操作変数法。比較したい集団を選ぶ際、原因が結果と交絡している(いい言い方が分からん)可能性が高いと考えられる場合に、原因には影響を与えるものの結果には与えないだろうと考えられる変数を用いる。これはかなり恣意的になるだろうと思われた。テレビが学力(的なもの)に与える影響は? という設定において、ある時期にテレビ放映の免許が停止されていたことをもって、その時期のあいだより以前にテレビが見られることであったことを操作変数とおいている研究があるのだけど、それって教育に対する市制であったり裕福さのありようを反映してたんじゃないのって自然に思ってしまうのでバッドエグザンプルじゃないの。これは要検証。そうとう悪い例だと思う。そしてこの手法が一番難しい。回帰不連続デザイン。ある恣意的な境界で環境が不連続に変わった場合に、その境界の近傍では それ以外の条件は変わっていないだろうと考えるということを利用したもの。マッチング法。 複数の条件に対して出来るだけ似たものを寄せ集めて比較する方法。 例としてある大学の入学試験に合格しているか、という複数の変数を人間の目で判断しているという条件を使う、なんて方法が紹介されている。あとは重回帰分析とかです(知らんけど)。

基本的にはものすごく平易で、さくさく読める。経済学、という観点では、positiveというよりはnormativeな分析がなされているようだ。それはただ、読者の興味を引き、本として成立させるための内容のようだけど。