何か美しい物語だった記憶があって、再読。『季語集』の冬のパートを読んでいたら「小春日和」の項でインディアン・サマーへの言及があり、おれはこの本の解説でその単語を知ったので、リンクするものがあるわけだけど、「透明なプラスチックに閉じ込められた蝿」というのが重要なモチーフだったのにも関わらず、いったいどんなものなのかわからないまま最後まで読んで、解説でようやくそれが何なのかを知る、という体たらくだったのも記憶している。それ以外は、最後の展開と、打ち捨てられた道路のイメージ、それだけが残っていて、こんなエピソードあったっけ、と思いながら読み返す。美しい物語かどうかはいまとなっては不明だ。最後の二章ほどは、昨日読んだせいで、迫りくる月曜日のプレッシャーによって丁寧に読めなかった実感もある。

現在、文庫版はAmazonでは買えないみたいだ。そう思うと買っておいてよかった本。それにしてもこれが2021年最後の小説にならないことを祈るばかりだよ。