矢野健太郎・一松信『角の三等分』

角の三等分 (ちくま学芸文庫)

角の三等分 (ちくま学芸文庫)

任意の角の三等分線を作図によって描くことができるのかという問題。これはまあ昔からよく知られた難問であるらしく、他にもある立方体の体積をちょうど倍にすることができるかとか、ある円と同じだけの面積を持つ正方形を描くことができるか、というのも一緒に知られた問題なのだそうである。ここで作図といったときにはレギュレーションというものがあって、定規とコンパスのみを使うこと、定規というのは長さを測るものではなくて線分を引くことができる、などなど。

さて三等分線を描く。一般の角の三等分を描くっていうのはまあ不可能だということが証明されてるわけなんだけど、それはどういうわけかってのがこの本の解説するところ。簡単に言うと三等分をおこなったとき、この作図によってある長さの線分が作られるんだけど、この線分の長さというのはとある三次方程式の解になっている。ところが作図のなす代数ではこれを求めることができないっていうストーリーだ。作図の代数ってなによ、となるんだけれど、実は(長さ1が決まっているとして)加減乗除のみならず平方根をとる(開平)演算までもが定規とコンパスで行える話が出てくる。これってすごくね? と思う一方でやや飛躍のある気もするわけで、ではどこが引っかかるのかというと、別に三次方程式の解で表されるその長さを求めたい訳じゃない(ただ角度だけ三分割できればいい)のに、なんでそれを求める問題になっちゃうわけ? ってとこ。たぶん作図によって描かれるすべての交点どうしの距離は、上記の代数で構成? 生成されるってことなんだろう。いやあしかし代数。ここにきて代数の意味するところがわかってきたというか。つまり元と、元を生み出す演算のことなのですね。だから代数的データ型は代数的というのだ。

さて、あとの話はたぶん三つで、作図の代数は、有理数体にいくつかの元の平方根を加えた拡大体をなしていること、この体は有理数の立方根を元として含まないこと、それと三次方程式の解は一般に立方根を含むこと、である。最後の話はもうちょっと議論があったはずだが、最近は集中力がなくてよく追えてない。読み直さないと何を問題視して何を得たいのかがよくわからず迷子になってしまうな。