おれが自重するということ

いつも通りなおざりにバイトをしたあと、トイレでおしっこをして帰ろうとすると、「けじなんさん」と後輩の女の子に呼び止められた。年は2つくらい下で、胸がすとーんとしている子だ。女の子には自分から話しかけないようにしているので、これが初めて話す機会だった。見ると、他の後輩(あとはみんな男)も数人集まっている。胸をうっかり見ないように注意しながらその女の子に視線を戻すと、「今からヒマですか?」と訊かれる。そりゃヒマだ。帰っても虹裏か、バイト中に立てたldrのピンの消化くらいしかやることがない。それでヒマだよ、と答えたら、彼女は「あの、今からみんなで自重するんですけど、けじなんさんも一緒にどうですか?」と、こんなことを言ったのだった。驚いて「え、自重、ですか」思わず敬語になってしまった。自重だと。いやな汗が噴き出る。「あ…いや…俺は自重とか、しないようにしてるから…」と言いながら男たちのほうを見ると、「おいおい22にもなって自重したことないのかよ」という目でこちらを見ている。女の子も困ったような呆れたような顔だ。見下されたッ!と思うと、「お、オレは、自重しないって決めてるんだっ!」と言いながら女の子の首を絞めていた。でも首を締めていたのは頭の中だけで、伸ばした手は弾かれてしまっていた。悔しくて涙が出そうで、「帰ったらクソスレ立ててやる!荒らしてやるからな!」と捨て台詞を吐いて走って帰った。先輩の威厳も何もあったもんではない。一人で駅まで歩きながら(走ってたら疲れたので途中でやめた)、このことをどうおもしろおかしく日記に書こう、なんて考えている自分に腹が立って、加えて、あいつらは今ごろ楽しく自重してるんだろうな、と思うとまた泣けてきた。
結局、帰ってもスレを立てる元気はなくて、「大学いくのめどい」というスレを立てたら「退学して死ね」的なレスが3つくらいついて沈んでいった。がーんだな。
そんなこんなで僕は今日も自重しません。