玄関のドアに鍵をかけ、ひとりで最後のチェックをして、大きな荷物を引きずりながら薄暗い道路を蹴って出発した。衣装もメイクも久しぶりに、自分でもおどろくほど気合を入れて(それはもう、はじめてメイクをした日に匹敵するほどの気合だった)その日は臨んだのに、カメラをかまえた奴ら、俺を見て、笑った!俺が主役だと甘い言葉で誘いながら、そのじつ何ひとつ俺を尊重することなく、俺が素人だからって、笑った。どの世界もこうだ。はっはっはー。でも何もしない。