桶と臓物

音節の新しい区切り方を発見したので、もう帰らない(帰れない)と思っていた家に戻ってきた。それから夜明けとともに、ペットを連れてまた家を抜け出した。こっそり出たつもりだったけど、妹が出てきてついて来たので、さしあたり家出は中断することにした。妹と一緒に、小学校の通学路を歩いている。妹はおれがまた家出しようとしていることに気づいていることを仄めかし、引き留めようとしているらしく、道中で話すことには、お兄ちゃんの日記を実は最初から読んでいるんだよ、といった。それから一枚の紙を取り出すと手渡してよこした。受け取って八つ折りにしポケットにしまっている間に妹が先に行ってしまったので、取り出して見てみると、アンケートをワープロで打ったものらしかった。読みながらファーストフード店に行きかかったころ「今日はやっぱり学校に行こう」と思ったけど、手ぶらだったうえ学校にはボールペンが一本しかなかったので家に戻る必要があった。定刻に10分前だったのでぎりぎりだったけど、家からは自転車を持ち出せばいいので、とにかく歩いて戻ることにした。道中レンガの壁に貼ってあるAVのポスター、前から気になっていたのだけど、桶のなかに魚の死体と全裸の女性が一緒に入って、魚の内臓を身体に絡めながら微笑んでいる。さすがにこういう企画は、ちゃんと臓物も消毒して、危険のないようにしているんだよと、自分を納得させた。