砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

★★★★。このレーベルだと『フランス革命 歴史における劇薬』を読んでよかったが、これもすばらしい。なんかまえがきからして名文だの思うのである。名文って言い方あんまりしたことなかったな。今後積極的に使っていこう。

砂糖(きび)のもつ特性といえば、その精製のために大量の労働力と地味の消費のため、広大な(熱帯の)土地を必要とするということだ。砂糖のあるところ奴隷あり! ハイチは初の、黒人による植民地からの独立国家らしい。植民地であった国々の多くがいまも貧困にあえいでいるのは、宗主国がかれらをモノカルチャーに仕立てあげてしまったからだ。

砂糖がイギリスで熱烈に消費されるようになったきっかけは、茶との出会い。どちらもイギリスで生産されるものではなくて、世界の(イギリスを挟んで)反対側から輸入されたものであるというのは、いまの文化が輸入物に完全に依存しとものであったということで、島国帝国らしいと言えるののだろうか? はじめはステータスシンボルの組みあわせとしての採用だったが、やがて砂糖や茶が安価になってゆくと、一般階層まで普及してゆく。しかしこのあたり、それでも当時は高価なものではあったという話もあり、どのタイミングからほんとうに大衆化していったのかがよくわからないな。コーヒーが流行らなかったのは、家庭で淹れることが難しかったからだろうと見られている。イギリスが持っていた植民地の関係もあるのかもしれない。

さて、産業革命に入ると砂糖入り紅茶は労働者に欠かせない飲料となっている。カフェインと糖分なのだから、おれにも実感はある。砂糖きびプランターは大きな政治的影響力をもっていて、イギリス国内の砂糖価格を高く保っていたわけだが、ここに異を唱えるのが工業労働者の使用者側で、労働者たちのエネルギー単価を下げるため、砂糖きびプランターたちを攻撃しはじめる。そうして当時の奴隷解放論者たちと組んで、奴隷制を廃止したわけだ。そしてプランターが力を失うと、砂糖への関税が廃止され、安価な外国の砂糖が流入するようになった。

  • 教皇分界線 p27
  • 砂糖の生産には大量の労働力と地味が必要 p28
  • ハイチは西半球最初の黒人独立国 p43
  • フランスはワインがふつうなのでイギリスほど砂糖を消費しない p88
  • 京都の円山公園のほとりの長楽園はタバコ長者の屋敷 p111
  • 英語にもフランス語にも「おかず」に相当する語はない p156
    • 農耕牧畜で雑食性になった?
  • 労働者の朝食を安価にするための奴隷制廃止 p183