喫茶店にて

今日はあまりやる気が出なかったので、直行して打ち合わせをした出先から会社に戻る途中の喫茶店に寄って時間をつぶした。ここは雰囲気もオシャレすぎず、かといってダサくもないので何となく気に入って時たまよるような、そんな店だ。
珍しく込んでいたので、四人がけテーブルに座っていた俺に相席を求めてくる店員。特に断る理由も無いので許可したら、座ってたのはかなり俺好みの女性だった。20ぐらいかと思える彼女は、美人なのだが額、といっても眉の間あたりに大きな赤いアザがあったのだった。気にはなったのだが、もちろん話かけはしなかった。
少したち、近くのテーブルが開いたので席を移動するかと聞いてくる店員。しかし彼女は移動するかと思いきや、俺の前ににこっと笑顔でこの席で良いです、と居座った。話しかけてみよう。普段はそんなことはしない俺だが彼女が気になって「よくこの店来るの?」と訊いてみた。「いいえ、初めてなんです。喫茶店自体ほとんど来ないし。」と彼女。
そこに彼女が頼んだハンバーグピラフが運ばれてきて会話は中断される。うれしそうにフォークとナイフを手に取る彼女。次に顔を思いっきりハンバーグピラフへと彼女は突っ込んだのであった。唖然とする店内。しかし彼女は顔を上げると、顔中についたデミグラスソースを拭こうともせずにもぐもぐ食べる。眉の間のアザの原因はこれか。見るに見かねた俺が彼女の顔を拭くと、「ありがとう」と笑顔でしゃべる彼女。その後彼女が高三で、もう3月なので卒業、家族と折り合いがつかなくて家を出たいけどそんなお金はない、住むならこの辺がいいとうろうろしてこの店に入ってみた、ご飯に顔を突っ込むのは昔のトラウマが原因で、今でも大衆の面前で時たま行ってしまうらしい、ただし本人に自覚はなし、などを食べながら話した。
さて、これから俺は仕事に戻らないと、しかし彼女ともっと話してみたいと思った。彼女もこの辺を教えてくれるなら大歓迎と、一緒に店を出た。