顔/幼虫

ぶ厚い装甲スーツを身にまとい戦う、つまりゲームの影響で、そういう戦闘集団に所属していた。三十すぎの屈強な短髪の男がいたのが、行方をくらましたというので、何人かと捜しに出かけたのだ。コンテナの並ぶ敵性施設で一度発見し言葉も交わしたのだけどまた見失い、今度は敵の一人の手引きを受けつつ、地下に潜り、今度こそ彼の姿を捉える。その時目にした彼の顔は、そのパーツのすべてが中央に寄っていて、驚いた。前に見たときに感じ、そして無視した違和感の正体はこれだったと気付く。その時よりもずっと症状は進行しており、最早人間の顔とは思えない変形ぷりだった。これは薬の副作用ではないかと彼は言う。戦いの際、恐怖を隠し気分を高揚させる薬を彼は常用していたのだ(俺は使っていない)。どれくらい使ったのか、と聞くと千回、と答えた。ここまで手引きしてくれた敵の一人が、治す方法があるかもしれない、とか何か希望的なことを言い、俺たちはぞろぞろと地上に出る。外は夜で、出口には何台かの車両が並んでこちらを照らしている。敵に不審がられないよう気をつけて自然に振る舞いながら、自転車を奪うと、俺たちは逃げ出した。

アゲハチョウの幼虫を食べる。しかし後から考えるとその形はエッシャーの絵に出てくる扁平な軟体動物で、ただ表面の色と模様がそう思わせていたようだった。丸ごと口に含むとぶにぶにとした感触が口中で感じられ、気色が悪く、これを口から垂らした姿を見せてやろうと思って唇で端を咥えたが、自らそれに触れることになっていよいよ耐えられず、ぺっと吐きだした。それから、昔は食えたのになあ、と独り言のように言ったが、起きてから考えると、食べたことなんてない。