小林多喜二『蟹工船・党生活者』

蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

これ、いつ買ったやつなんだろうなあ。なんか流行ってて本屋に平積みされてた頃のやつな気がする。

話としては面白くないんだけど、当時を描くものとしては興味深い、のかも。それにしても描写が真に迫っては感じられず、政治的弾圧と抵抗の話であれば、たとえば『精霊たちの家』とかは面白かったな。あんま比べるものではないけど。この手の話を読むと、『1984』みたいなディストピアものとよく似てて、となると抵抗は失敗するな……という予感がある。

『党生活者』読んでると当時の弾圧・衝突の厳しかったことがうかがえる。それを思うと今は醜いものこそあれ、のほほんとした時代だなーと思う。こんな状況でよく出版できたな……。

ピエール・ルメートル『その女 アレックス』

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)

バーナード嬢曰く。』4巻で名前を見て、面白そうだったのでパディングとして購入、したのだけど、手にとったら面白くて昨日そのままめずらしく夜中2時まで読んでしまった。夜ふかしと、あわせて酒も飲むので寝不足になっている。ミステリやサスペンスはいつもこうなってしまう。そして確かにヘヴィで、すぐ寝付けはしまいと思ったので口直しに自分の文を読んで寝た。叙述などではなく、プロットが急である点で紹介されそうだが、それ抜きでも十分面白いと思う。

アレックスが誘拐され、その理由もわからぬまま監禁される、という話から始まったはずが、アレックスが脱走してからは、彼女が男たちを次々殺してゆく、警察はそれを追う……、という急転ぶり。監禁されているときの描写はそれほど迫真を感じられずのんびり読んでいたが、脱走してからはだいぶハラハラさせられた。誘拐犯の謎などは始まりにすぎず、本当の謎はその女なのだった。読んでいるときは分かってなかったけど、いま考えたら口を狙った理由もわかる気がする。しかしホテルの隣人を妄想するシーンはただの殺人狂みたいじゃないか? むしろそうなっていたのかも。

面白かったけど高校生に薦めたい感じではないな。本はどっかに追いやりたい……。読みはじめたときにはくどくどと長ったらしい描写に閉口したけど、これがフランス流かなと思ったら読めるようになった。

こないだの『解錠師』もこのミスだったかな。そういう気分なのかも。

ケン・リュウ『紙の動物園』

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)

天候不順でカンヅメ状態になったときに、とりあえずしのごうと思って書店で買った本。結局読まなくて、カバンの中に入れっぱなしだったのをこのたび引っ張り出してきた。とSFのつもりで手に取ったら、どちらかというと幻想で勝手に期待はずれ。SF的なギミックがうまくハマって話に心地よいオチがつく、というのを期待していたので、ふんわりと決着させずに余韻引いて終わるこの本はなんか違うとなったわけだった。表紙の感じをみて、も少し構えを違えたほうがよかったな。というか、ルーツを強烈に意識した作風ってのは、ハマるときはハマるのだろうけど、そうじゃないときのほうが多いんだよな。あっちじゃエキゾチックでうけるのかもしれないけど。しかしタイトルはかっこいいよな。