今日はめでたい日であります。

なぜならば、友人が結婚することになったからだ。
その友人は夕日の沈む僻地の大学に通っていたのだが、内から外からのいびつなプレッシャーに堪えきれず、ある日突然、死んだはずの学費が黄泉の国から還ってくるという不思議なYAGに入学した。入学直後は「ニーソだ!ニーソが歩いている!」「声優の卵とかwwww」と夢のような学院生活を嬉々として語っていたものだったが、次第にその口は重くなり、数ヶ月もしないうちに連絡がつかなくなった。
どうしたのか。彼は悪いことをして捕まったんではないか、ネトゲにでもはまっているんじゃないか、などと、仲間内であることないこと言いあっていたころに、彼から電話があった。そのとき、彼が結婚する予定であることを知らされたのだ。その知らせを聞いて、おめでとう、と僕が言うと意外にも彼は嘆いたのだった。「全然めでたくないんだ」
彼の話によると、相手とはその専門学校で知り合ったらしい。新しい生活にまだ慣れず不安定な時期に出会い、「せっかくだから」(僕には意味が分からないが、彼はこう言った)と付き合うことにしてみたが、そのうちに実はメンヘルであることが分かり、別れ話になると決まって暴れるため、ずるずるとその状態で過ごすうちに彼女が妊娠させてしまい、結婚することになったのだという。できちゃった結婚である。「だからめでたくないんだ。俺の自由はますます奪われるだろう。彼女を養うために働かなければならない。結婚は人生の墓場と言うじゃないか。俺の人生はここで終わりだ。だから今日は俺のために泣いてくれ。」としゃくり上げながら言うので僕も泣いてしまった。その話を他の友人たちにすると、みな一様に泣いてしまった。
そういうわけで今日は愚かな彼を嘆く、葬式の日なのであります。泣きながら酒を飲むのであります。