昼のこと

コンコンガチャリ失礼しますと中年女性の声がし、部屋の灯りがつく。ここはホテルだから毎日掃除が入るのだよなー。と思いながら俺は寝ている。入るや否やおばちゃんは「わぁ、すごい」と呟く。狸寝入りしている俺の存在には気付いてないようだった。とりあえずゴミだけ回収してもらえればいいかなーと寝てるふりを続けるのだけど仕事をしている気配がない。じきに廊下から楽しそうなおばちゃんの声、電話をかけている。「山村さん、ちょっと来てくださいよー、801号室がすごいの」「そう、鍵も置きっぱなしで」「隣の部屋の女性とどこか行っちゃったみたい」どこからその推測が!?…おばちゃんはその後も「部屋がすごい」を数回繰り返して電話を終え、部屋に戻ってきた。
と、ここでネタばらし。いかにもたった今起きましたよーという顔で体を起こすのが俺の優しさだ。おばちゃんは「あらいたの、すみません」という感じのことを言って去っていった。それにしてもこのおばちゃん、失礼である。まあ荷物が常人の3倍くらいあるからな…(人の荷物も預かってる)。