したっておれはミーハーであることが楽だと思っていたふしがある。それは美徳のはずだった。いや美徳であるのは正しかったがけっして楽な道ではなかった。往けども往けども果てのない道だった。それに気づいたある時おれはこれをあきらめた。ミーハーになることを諦めたのではなく、これを楽な道だと思うことを諦めた。修羅の道だと思うようになった。先んじて歩むものは心のうちに激しい戦いをくり広げていると思うようになった。おれは先人たちの後をつつましく歩むものになった。さりとて長年つちかわれたミーハーなるものへの願望はおのれの心のなかに根深く居座っており、おれは先人たちの影を追い続けるものになった。おれのこの姿こそミーハーと呼ぶべきものであった。