マミさん魔法少女を語る

「そうねえ……、『希望から絶望への相転移』なんて言ったら素敵だけど。二十歳(はたち)過ぎちゃったら、せいぜい『期待が失望に変わる』くらいが関の山でしょう。そう気づいたのはずっと後になってからだったけれど。自分でも分かるの、もう魔女にも成れやしないのよ、こうなると。インキュベーターにとっても価値ないし、まさに昔の私がそうだったみたいな、少女を騙して新たに魔法少女に引きずり込むための釣り餌としても用をなさないの。高校を卒業しても魔法少女やってる姿なんて、中学生の女の子にとっちゃそれこそ悪夢だし……。
ソウルジェム? 見ます? これ、ソウルジェムってね、だんだん濁るスピードが落ちていくの。今はほら、くすんだまま……。昔はあんなにすぐに穢れが溜まっていたのにって思いながら、魔女を狩る頻度も落ちて、今は月いちもないくらいかな。若い子の縄張りを侵さないように、あぶれた魔女を狙って……。魔女も魔法少女も、お互いねー。
「昔は後輩たちにも慕われていたし、ああ、これは皆もういないから何とでも言えると思うかもしれないけど(笑)本当のことよ……たぶん。その頃は、正義の志(こころざし)みたいなものも、持っていたと思うのだけど。みんな死んじゃった……。美しい願いなんてなかった私だけが生き残って、誰かのために祈った彼女たちはみんな死んじゃった。ねえ、私は彼女たちに『願いは自分のために使いなさい』ってずっと言ってたのよ。けど誰もそうしなかった……。利己的な願いなんて誰も願わなかった。
「だから彼女たちは死んだのかもね。美しい願いとともに、悲劇に消えた。こうやって私だけが生き残ってるのは、他人に希望なんて抱かずに、醜く、利己的なことだけ願ったからかもしれないわね……。はあ(と紅茶を飲む)。……そろそろ時間だから、お暇していいかしら」
 私たちの取材に魔法元少女巴マミさん(2X歳)はそう語り、アルバイト先のファミリーマートへと去っていった。