黄緑の髭

何やら怪しい気配がする、と彼女が言うので、校舎の裏手にある広い野っ原に出た。人がまばらにいて、何かを遠巻きに眺めているようだった。土地の高低の影になっていて、こちらからは何がそこにあるのか知れない。けれどそれは繭だろうと思った。彼女もそう思っていると言った。ぐるりと回って降りると、はたして、土壁を背に大きな繭があり、その手前にいる男が群衆に語ることには、この繭に彼の息子が閉じこめられているのだった。おれと彼女は、そう語る彼のあごひげが地に届くほど長く、先に伸びるにつれ黄に、そして緑に色を変え、その先をたどれば繭をなしているのが彼の髭であることに気づいた。おれ達の視線を受けていた彼は、やがて造作なさげに髭をひとつかみに千切ると、そのまま話をつづけた。