アニメの #11 期待、不安、そして予兆

よかった。今回はすばらしくよかった。まるで30分の放送とは思えなくて、60分くらいに感じた。レッスン中の彼女たちと、電話に出るプロデューサーの視線が交わならいところ、それから、ドアにスプレーの使用禁止との貼り紙のあることが何故だかおれにリアリティを持ってあらわれる。
それにしても彼女たちの関係はあくまでつねに個人同士のもので、だれとかれという1エッジのコミュニケーションしかなく、みなの中にあるわたし、という振る舞いをしない。第三者の目を意識することない態度は、言ってみれば嘘みたいなもんだが、シーンにあわせた任意の幾通りもの相手と、それでも嘘ではなくつねに真摯に対話をする様子に、おれたちは想像の余地をみる。彼女たち全体としての関係というのがはじめから決まっていたとしたら、それはあるストーリーを形作るだろうが、無印「アイドルマスター」としてのアニメには到底なり得なかったわけだ。
夜のシーンが多かった。いや、じっさい今回はずっと夜だった!おれは夜が好きだし、夜から人間のいる空間を切り取る蛍光灯の明かりが好きだ。静かに光を放つ人気のない駅、それから、降りた電車をぽかんと見送る春香、彼女を包む暗い町がある。生活がある。練習場の締め切られたカーテンは、間接的に、外の闇を暗示する。画面が明るくとも、もっともっと広く闇が覆っていることの想像、そう、カーテン!そして、春香と千早!以前見た覚えのある、千早の家をおれたちは再び訪れる。カーテンの隙間から除く夜、玄関から続く廊下と殺風景な部屋、すべてが明るいわけではない家の隅のほうの暗さが、壁や家具が白いためかえって強調され、彼女たちが映る窓の奥、ベランダの向こうには他人の家の明かり、誰もがいる夜の中に、ふたり、春香と千早はいて、風呂で体を温めたら、その家の服に着替えて、あとはおやすみ、それから早朝に見送られるまで、あくまで昼の明るさはなく、互いのこと、自分のことばかりが意識される、夜だ。