★★★。今年の古本で買った1/1。乱歩賞。どちらも詳しくはないのだけれど、メフィスト賞でもよさそうなお話である。ミステリというよりは、探偵小説といったほうがしっくりくるように思う。猟奇殺人鬼一家の娘が、消えた兄の死体と母親の謎を解く。少なくとも解こうとする。娘を除くと家に残ったのは父親だけで、この事態にのらりくらりとしているし、意味深なことを言うし、いかにも怪しい。設定は奇妙だけど、全体のお話の流れとしては意外とシンプルで、メタファーやモチーフみたいなものも、あまり包み隠さず提示されている印象がある。例えば……地下室の死体とか。監視カメラとか。無駄な装飾がないと言ってもいいのかもしれない。QJKJQの意味はよく分かんないんだけどね。かなり最初のほうから匂わせてるとおり、兄も殺人一家も少女の妄想であったということが物語の中盤でわかり、そこから先はこの父親は誰なのか? 私は誰なのか? というのがテーマになる。この転回自体は珍しくないと評にはあったようで、そういう気もするけれど、具体的に何か名前を挙げられはしないなー。亜李亜の三日間にわたる探偵の道のりであるし、クライマックスでは血を見るような戦いもあり、グロテスクな物語でもなくて、ストレートな冒険譚のように受けとれる。