★★★。買った経緯は同前。しかしこの手の本はすでに何冊も読んできた感覚があるな。ひょっとすると前世の記憶かもしれない……。直感とか経験を切り崩すおもしろ論文、実験の紹介。と洞察。ここまではいいんだけど、ここから著書による実体験、描かれたストーリー、社会への提言とかになると、論拠は乏しくて、科学とは程遠い内容で、そこ分離できないもんかなあ。本を越えてこの感情が何度もある。

とくに社会規範の話では、社会規範のもとでは他人の幸福を損なうことに対する意識がもろもろの行動のブレーキになっている、というストーリーを検証なしに進めている。分かりやすくは皿に残った最後の食事のいちピース。それはいわゆる罪の意識という理解をしてるようだけど、おれのような人間にとっては恥の意識なわけだ。遠慮のかたまりというやつがアメリカにもあるのだと知らなかったので面白かったけど。最後のひとつを取らないことが、他者の幸福を損なわないことへの志向によるのだと、なんの検証もなく! この本では述べられてるのだけど、いやマジなんなの? 恥の意識の感覚を持ってるおれにとっては激しいズレがあって、実験結果は信用できても、そのストーリー的解釈は、まるで信用できないなあ。と思う。この章に関する提言も、企業体が社会規範を持ちうるかどうかには検証はなくて、気楽なもんだなあ。

おもしろ実験の紹介としては十分に面白いはずなのだけど、恐らく本にするのには足りなくて、実証に乏しいストーリーを追加してみたり、しているというのは、面白い。