好きな人にプロボーズしたところ、受けることはできないので代わりにこの人と付き合ってあげて、と電話番号を渡される。喜んで承諾されるはずだからプロボーズしたわけなので相当面食らったが、やがて気も変わるだろうと考えて素直にその番号へ電話をかけてみる。スマホには登録されていない番号だった。出てきたのは女学生らしき声で、こっちのことを知ってるふうに話すので名前も聞けない。おれも一度話したことがあるのかもしれないと思うので余計に。一、二度は電話したのだけど、自分のことを話しているばかりだ。いやそうじゃなくておれはもう一度プロポーズしなきゃいけない、と決心してバスを降りながらその子に電話をかける。風が強く吹いていて声が届きづらいなか、別れを告げると返事が帰ってこなくなった。電話口は無言だがおれは電話を切れないでいる。