人においていた信頼をすぐに捨ててしまうから、自分は迂闊なことを言わないよう口をつぐむんだろうよね。


大きな遺産が転がり込んできたらしく家族を殺そうとしているという話を老婦人があまりに気安くおれにしてくるのでおれも殺す気なんだろうと恐怖して絶対に誰にも喋りません、このことはすぐに忘れます、と聞かれもしないのにまくし立てる。一方で殺されたときの保険に話の一部始終をどこかに記録しておくことにする。食卓ではその老婦人の長身の娘がフライパンで何か(たぶん人)を殴っている。殴り続けている。しかし悪夢ではなかった。