たとえばロンドンのとある貧しいお針子がじぶんの屋根裏部屋で黒土いっぱいの植木鉢に花が咲くのを何とか見たいものだと思ったとしましょう。たった一輪の花がその哀れな女をなぐさめるのです。しかし残念ながら現在のところ、 手持ちの命のなかで、あちらでバラの花になりうる「物質」はこのパイシャ地区にいる政治家とのこと……。そこで登場した無頼漢が飛び出しナイフを振りかざし、くだんの政治家に切りつける。腹から飛び出た男の腸は汚水に流される。人々は辻馬車を連ね、その政治家を埋葬しにいく。そして物質は分解をはじめ諸元素への大々的な変化に混じりあい、ついにその無用な政治家はパンジーの花に姿を変えて、かの金髪のお針子の屋根裏部屋を飾る。だから殺人者は博愛主義者なのですよ。

年末読んでた本の①。裏表紙のあらすじと本文とで亡者の台詞が全然違っててうけた。