ハックス! #1

ハックス!(1) (アフタヌーンKC)

ハックス!(1) (アフタヌーンKC)

読んだ。たぶん3巻くらい出ているうちの、まだ1巻だけね。
生徒会ものだと勝手に思って買ったのだけど、生徒会じゃなくてアニメ研究部の話だったという。あらすじを解説してやろう。主人公、カテゴリ的には天然に分類されてもいいような女の子の阿佐実みよしは、高校に入学して最初の新入生歓迎イベントのオープニングで映写された、自主制作アニメに心打たれる。主人公の女の子ともあれば心は純粋、気持ちは一途なので、とうぜんその日のうちにアニメ研究部の戸を叩く。その高校のアニメ研究部とは、他の部活とも掛け持ちする部長がたったひとり名簿にいただけの名ばかりの部だったのだけど、彼女は持ち前の純粋な情熱(と恐らくは隠された才能)で次の日には拙くもパラパラ漫画を描いてみせるくらいのことはやってのけ、同じく一年生の、同じくアニメ研究部に興味を持った男子――こいつは知識も技術も豊富に持っている(彼女のいわば上滑りな情熱を、読者が安心して任せることのできる彼がいなければこの物語は回らない)――の協力を得ながら、周囲を巻き込んでアニメ研究部の活動に再び火をともす!そういう話。俺たちのアニメ制作はこれからだ!そういう感じの1巻だった。
最近は涙もろくてよくないよな。それで俺はこれを読んで、泣いた。それを次の段落で書きます。それだけじゃないんだこの漫画は。
青春だ。さあこの話には既視感を覚えないか?俺だよ!覚えねよ!俺だよ!ハタノさん、この話には重要なサブキャラクター(もしかしたら、サブじゃないかもしれないけど)がいる、彼女の名前はハタノさんだ。ハタノさんは両の髪をピンで分けている。ハタノさんはみよしのクラスメートで、他の友達とも一緒に昼ご飯を食べたりする仲だ。みよしはハツネミク(初音ミク)も二〇動画(ニコニコ動画)も知らない、アニメなんてお兄ちゃんが見ているのを見たというくらいしかないウブな、この世界には新参者であるのに対して、ハタノさんはそういうカルチャーは当然のごとく知っている、内気な、いわゆる隠れオタクで、クラスメートとの会話でそれらを好むオタクが近づきがたいものだという風に語られるたびにひとり汗を流し(この子はわりといつも、そういう風に汗をかく)、「大丈夫……がんばれ私」と自分を励ますものである。
おれたち読者はみよしの気持ちと才能が物語を駆り立てて彼女の創作を進めるのを眼にする。それがメインのストーリー。いっぽうその陰で、ハタノさんは何をしている?(みよしちゃんは何をしているんだろう?仲良くなりたい)なんて思って、いるだけ!こういう人間を見たことがないかい?お前だよ!ハタノさんはいつからアニメが好きだったんだろう。みよしがアニメ研究部に入ったなんて聞いて、どう思ったんだろう。ハタノさんが出てきてから俺はずっと、このハタノさんがアニメ研究部に入れるものかと、そればかり気にしていて、ストーリーがよく分からなかった。アニメになんてほとんど入れこんでいなかった主人公が、アニメという手段を得たとたんに才能を開花させて自己実現を果たす一方で、それよりも(きっと)ずっと前からそれが好きだったはずの女の子は何もできないままであるなんて、おれはよっぽど、いい話だと思うよ。だから続きも読みたい。わざわざそういう女の子を描くからには、何らかのカタルシスを期待したいものだけど。さてさて。(ちなみにwiki(pedia)で調べたようすだとハタノさんは未だにアニ研には入部できていないようだ)

ハタノ「……みよしちゃんは よく観たりするの……? アニメとか……」
みよし「ん? いや〜〜〜 それほどでも ムフフフフ」
ハタノ(…………?)
みよし「あ! でも すごい面白いよ すごい! 楽しい」
ハタノ「………」
みよし「あ きのう」(別の話題に移る)

まあハタノさんが可愛いからまだ救われるというところはあります 篠原さんが一番かわいいです