スペイン語を勉強してだんだん慣れてくると、あれだけカオティックだと思われた動詞の活用もシステマチックに感じるもので、むしろ英語ってめちゃくちゃな言語なんじゃね!?と感じるようになってきた。スペイン語の単語を頭に入れるためにWiktionaryで語源を追っていくのだけど、基本的に語源はラテン語で、イタリア語やフランス語には同源の単語があるものだけど英語はそうでもなかったり、たまにあったり。ヨーロッパの言葉ってラテン語が源流だと思ってたけど違うらしい。

Kindle Unlimitedでそれらしい本があったので読んでみたが、散発的に豆知識を書き連ねていてどうもストーリーとして理解できなかったので(なんて本だったか忘れた)別の本を買った。

コンパニオンサイト 連載 | 『はじめての英語史』コンパニオン・サイト もあって、こちらだけでも読みごたえがあるんだよな。そも、著者のホームページを見たらかなりのテキストジャンキーみがあってたいへんいい。

つまるところ英語には三層構造があって、本来語である英語、より高級なフランス語、さらに高級のラテン語で成っているということらしい。なのでヨーロッパの国のほかの語と通じるところもあれば、ぜんぜんそうでもないものもある。英語はゲルマン語派で仲間はドイツ語やオランダ語ラテン語はイタリック語派でこちらにイタリア語やスペイン語、フランス語がある。

例の三単現のsも、共時的な視点ではなぜこれだけ語尾の変化があるのか? という話だが、通時的に見ればなぜこれ以外は語尾の変化がないのか? という疑問になる。古代の英語には動詞の屈折という性質があって、動詞を変化させることで主語や時制を表現していたものだったが、だんだんと一単語の変化ではなくて、単語同士の関係で意味を表すようになる。語順の固定化なんかも含めて、analyticからsyntheticへの変化といえる(逆かも?)。で、当然もともとは主語の人称や単複によって語尾はちがっていたのだが、ゲルマン語派では語頭にアクセントが置かれるため語尾の子音などは時代とともに失われていきがちであった。なかでもsは消えにくい子音だったのでこれだけが残ったのがいま、ということらしい。二人称については、主語のthouがyouになった経緯があるらしく(それについてはこの本では詳しく語られなかった)、それにあわせて語尾も消えていったみたい。この話をそのまま聞いてもそもそもが複雑すぎでは? と思ってただろうが、スペイン語やってると人称で語尾が変わるのが当然のことなのでスンナリと受け容れられた。イタリック語派はアクセントが末尾近くなので語尾が消えなかったのかねえ。

anがそもそもoneと同源だってのも、スペイン語ではunoがunになる変化があるのでそりゃそうなのだわ。古代の言語に由来を持つ、現在では不規則変化を持つように見える単語だが、よく使用されるものがそうなりがち(beとかgoとか)なのもserとかirとか、身近な例を知ってるので、さもありなんと思う。

thouがyouになった経緯は 連載 第10回 なぜ you は「あなた」でもあり「あなたがた」でもあるのか? にあったのだが、もうこのサイトだけで事足りるのではないだろうか……。vosがyouと同源だというのは収穫。